ご挨拶

ご 挨 拶

このたび2023年3月4日(土)、5日(日)の2日間、東京都小平市にあります国立精神・神経医療研究センターユニバーサルホールにおいて、日本ADHD学会第14回総会を開催させていただくことになりました。COVID-19の感染拡大は、いまだ終息をみておらず、このたびは現地開催とオンライン配信のハイブリッド開催とさせていただきます。また、一部を除き、後日のオンデマンド配信にも可能とさせていただく所存です。

注意欠如・多動症(ADHD)は、1900年代初頭に報告され、もっぱら幼少期に端を発する器質的な要因が想定されて参りました。操作的診断基準が一般化してからは、もっぱら不注意、多動性-衝動性により定義され、現在、神経発達症の一つとして位置づけられるようになっていることは周知の通りです。しかし、ADHDのわかりにくさは、これらの諸特性が、定型発達者と相対的な差異によって定義されており、その輪郭に曖昧さがあるという点です。現にADHD特性を持ち、当事者が多くの困難を抱えていることは歴然とした事実です。同時に、診断閾値レベルの特性を抱えながらも、比較的良好な社会生活適応を達成している方もあれば、診断閾値に達しないレベルの発達障害特性が日常生活に多大な影響を与えている方もいます。なかには、併存する抑うつ状態などの併存障害が、その人の抱える困難をより浮き彫りにしていることもあります。そのようなとき、医学的あるいは生物学的に定義されるADHDの中核的な病態はどこにあるのか、そこから逆照射されるADHDの診断をどこまで適応すべきか、ADHDに伴う困難をどこまで医学的に、他方ではどこまでを心理社会的にとらえうるのか、という点で見つめ直す視点が常に求められているといえましょう。

そのような目的でこのたびの総会では「ADHDの中核と輪郭」をテーマとさせていただきました。ADHDについて分子遺伝学、脳画像、神経心理学、治療反応性、併存障害との関係などの視点からその中核と輪郭を明らかにするとともに、いかなる治療の標準化と個別化が可能であるのかを2022年秋に公表されたADHD治療ガイドラインとの関係も含めて検討する予定です。

また、サテライトプログラムとしまして「医療機関におけるADHDの子どもの親へのペアレントトレーニング実施者養成研修」(オンライン開催)を実施いたします。総会に参加申し込みをされた方のうち本研修への申し込みをいただいた方のなかから参加者を選考させていただく形になります。たくさんの申し込みをお受けすることができませんが、本研修は国立精神・神経医療研究センターの研修として毎年実施しているもので、7月にも予定をしておりますので、あいにくご希望に添えなかった場合には、そちらへのお申し込みもご検討いただけますと幸いです。

また、さらにこのたびは、発達障害と藝術 「SAISAISAI〜差異才彩」と題しまして、当事者の作品展を開催いたします。こちらは、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 知的・発達障害研究部が主催し、東京藝術大学 Diversity on the arts project(DOOR)とのご協力のもとに行うもので、総会会場に隣接する会場で開催しております。こちらはオンラインでの配信はございませんので、現地へのご参加をお願い申し上げる次第です。

COVID-19の感染拡大下において、多くの学会がオンラインでの開催を余儀なくされることのなか、オンライン開催のメリットを多く享受して参りました。しかし、一方では、オンライン開催では達成できていない何かがあったはずと確信しております。Withコロナ、Postコロナの学会開催に向けて新たな総会のあり方を目指すべく、常任理事の先生方のご指導のもと、石井礼花副会長とともに準備を進めて参りました。演者は全員が現地でのご発表、ご討議を予定しています。本総会の醍醐味をお感じいただくためにも、できますれば現地でのご参加をお願いする所存です。現地、オンラインを含め多くの先生方のご参加をお待ち申し上げます。

2022年11月吉日
日本ADHD学会 第14回総会会長
岡田 俊
研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター
精神保健研究所 知的・発達障害研究部 部長