ご挨拶

会長挨拶

2017年3月4日(土)、5日(日)の2日間、横浜市社会福祉センターで日本ADHD学会第8回総会を開催させて頂きます。今回の総会テーマは「ADHDのこれから」とさせて頂きました。ADHDが臨床場面だけでなく学校や企業などの一般社会においてもその存在や治療などに関する認知が進み、それと並行するように、たとえばDSM-5では正式に神経発達症(Neurodevelopmental Disorders)に分類され、自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorders、ASD)との診断の重複が認められる、など未だその臨床でも基礎においても混とんとしてはいるものの、少しずつADHDの姿が明らかになりつつあるように思われます。特にADHDが臨床的に単独で存在するというよりも、他の神経発達症と併存することが多いという事実は、本邦だけでなく欧米先進国においてもADHDに関わる臨床家の間ではコンセンサスになりつつあります。以上のようなADHDに関する理解をめぐる現況を踏まえた上で、今後の臨床や基礎研究が向かうべき方向を検討するべき時期に差しかかっているのではないかと考え、本総会のテーマを「ADHDのこれから」とさせて頂きました。

以上のような共通の問題意識のもとに、特別講演では母子愛育会愛育研究所の齊藤万比古理事長から「ADHD診断治療ガイドライン 第4版の概要」について講演を頂きます。教育講演は3題を予定しており、本学会の前理事長である市川宏伸先生から「成人ADHDの診療」、兵庫県立リハビリテーション中央病院 子どもの睡眠と発達医療センターの中井昭夫先生から「DAMP(Deficits in Attention and Motor Perception)症候群 再考と再興〜ADHDと発達性協調運動障害(DCD)について〜」、横浜市南部地域療育センターの井上祐紀先生から「小児のADHD治療における非薬物療法のコツ」、をお話し頂く予定です。

シンポジウムは2つ予定しており、詳細については検討中ですが、一つは発達障がいやADHDを対象とした脳画像などの脳科学研究からの最新の知見について報告し議論して頂きます。もう一つは徐々にトピックスになりつつある「発達障がいと脳腸相関の関係に迫る」について、臨床から基礎研究までを一線で活躍する先生方にお話しを頂く予定です。

今回の総会は初めて東京以外での開催となりました。会場費を抑え、海外からの演者を招かないで本邦の臨床家や研究者だけにご講演頂くという節約した総会運営に心掛ける点で、まさしく“ADHD学会のこれから”を考えるよい機会としたいと考えています。

会場は桜木町の駅前という非常に便利な場所にあります。期日は3月の初旬ですが、神奈川県は既に大分暖かくなる時期であり、会場は中華街や山下公園なども近く、天気がよければ散策にも適しています。ぜひ多くの方たちにお集まり頂き学会を盛り上げて頂けますようお願い申し上げます。横浜でお会いしましょう。

日本ADHD学会第8回総会会長
東海大学医学部専門診療学系 精神科学
松本英夫