ご挨拶

この度、日本ADHD学会第17回総会を開催させていただくこととなりました国立精神・神経医療研究センター病院の中川栄二です。
今回、日本ADHD学会第17回総会を茗荷谷にある茗渓館で開催させていただくこととなりました。
総会のテーマは、『自分らしく生きる 「Nothing About Us Without Us」』とさせていただきました。「Nothing About Us Without Us」は、特に障害者の権利運動において顕著な、自分たちの生活に影響を与える決定に疎外されたグループが全面的に参加することを提唱する原則です。1990年代、ジェームズ・チャールトンは障害者の権利運動でこのスローガンを広め、障害者が自分に影響を与える政策、プログラム、配慮の設計に関与すべきであると強調いたしました。このスローガンは、様々な特性や障害のある人々の経験が、自分らしく生きるために政策とサービス設計の中心となることを保証するための中核原則でもあります。
一方、近年では、様々な疾患が、遺伝子の働きを詳細に分析することで、個人に合わせた治療法や、将来的な遺伝子治療の開発につながる研究が進められています。ADHDの遺伝子治療は現在、研究段階にあり実用化されたものはありません。ADHDは複数の遺伝子と環境要因が複雑に絡み合って発症する多因子遺伝疾患と考えられているため、単一の遺伝子を治療すれば治るという単純なものではないからです。
アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)は、様々な遺伝性疾患や神経疾患の治療薬として開発が進められており、いくつかの薬剤は既に承認されています。すでに複数の神経筋疾患にASOの治療が行われており、ADHDなどの神経発達症や認知障害が併存している場合、症状の緩和や根治が期待されています。本総会では新規の学術的知見について教育講演やシンポジウムを開催いたします。
多くの皆様にお会いできることを楽しみにしております。
現地出席、オンライン参加とも多くの先生方のご参加を心よりお待ちしております。
2025年9月
- 日本ADHD学会 第17回総会
会長中川 栄二
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター病院
